ヒューマンエラーのタイプ分類(その1)(実行段階か計画段階か)

 

まずは、ヒューマンエラーの種類(タイプ)分類を実行段階で発生するものと計画段階で発生するものの2つに分類してみる。

 

1. 実行の失敗(スリップ及びラプスが該当。)(無意識的)

 

2. 計画の失敗(ミステイクが該当。)(意識的)

 

(1)スリップとは、計画(ルール)自体は正しかったが実行の段階で失敗してしまったもの(ボタンの押し間違い等)

   【アクションとして現れたもの。】

(2)ラプスとは、 実行の途中で計画(ルール)自体を忘れてしまったもの。

 (ある計画を実行しようとしたとき、別の指示があり、本来の実行を忘れてしまった。等)

   【アクションに現れなかったもの。】

 

(3)ミステイクとは、正しく実行はできたが計画自体が間違っていたものである。
(危険物質であるという認識がなく、通常通りの処置を行ってしまった。等)

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★まとめると以下のようになる。

 

計画  |   実行          |  結果

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正しい  |  失敗(アクションあり) |エラー:スリップ

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正しい  | 失敗(アクションなし)   |エラー:ラプス

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失敗・誤り |  正しい          |エラー:ミステイク

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(1)スリップは計画の正しさを意識せず、行動だけがルーチン化されているものである。

  注意の間違い

  強い習慣の侵入

  割り込みに続く度忘れ

  誤認識

  行為の干渉によるエラー 等

 すなわち、注意を向ける量が低下し、ボーッとしていたためにおきてしまう。

 

<スリップの対策>

 

・指差呼称(作業対象に指を差して対象を確定し、作業後にその内容を声に発した確認するもの)

 

(2)ラプスはアクションとして現れたスリップと比較し、

  記憶の間違い

  意図の度忘れ

  計画した行為のステップを抜かす

  前にした行為を忘れる 等

 忘れてしまいアクションが起きなかったエラーを定義する。

<ラプスの対策>

 

・忘れないようにこまめにメモを取る

 

・移動先に必要なものは必ず目に付くところにまとめておいておく

 

(3)ミステイクは

 

1)ベテランであるが故の失敗と

2)知識・経験の欠乏による失敗に分類することができる。

・前者は、

偏りのある確認、自信過剰など、

蓄積された知識・経験が解決方法を固定してしまい、状況に即した正しい方法を導くことができなくなるものであり、

ベテランによく見られるエラーである。

 

・後者は

   作業記憶の制約

   不十分な理解 等、

知識と経験自体が乏しいために元々の解決方法を知らなかったり、

誰もが経験したことの無い状況に陥ってしまい正しい解決に導くことができなかったりしたために起こってしまうものである。

これは初心者またはベテランでもこれまで経験していない全く初めての状態に陥ったときにおかしてしまうエラーと考えることができる。

 

<ミステイクに対する対策>

 

即効性のある教育訓練方法がないが、

 

・知識や経験の少ない若手職員には適正な判断をするための知識の教育を施す。

 

・知識・経験の豊富なベテラン職員には、過去の経験等から解決方法を固執させないための柔軟な判断力を養うために
様々な事例等を用いた教育を行っていく。

 

出典

 

http://www.fdma.go.jp/html/new/pdf/161129_kentou/2-2.pdfを参考にさせていただきました。

 

bousicom

スリップについて

【スリップについて、もう少し深く考えてみる。

 

ノーマンのスリップ分類によると、大きく3つに分類されるようだ。

その中でもまた細かく分かれていくので、以下順に説明を加えていく事にする。

 

1.意図の形成段階のスリップ(Slips During the Formation of an Intention)

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1-(1).モードエラー Mode Errors: Erroneous Classification of the Situation

状況を不確認のまま、別の場面では正しいとされる行動をしてしまうスリップである。

例1 シャープペンが書けないので、ついペン先に息をかけ温めた。

(鉛筆のときにする行為をしてしまったのである)

例2 眼鏡はどこだ、と眼鏡をかけたまま探す。

(眼鏡モードと裸眼モードを取り違えたことになる)

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1-(2).記述エラー Description Errors: Insufficient Specification

意図を形成するのに関連する情報が十分に得られなかったり、

意図が適切でもそれを実行する行為がきちんと指定されないために起きたスリップである。

何をするかの特定しないまま実行されたため、下記のようなぼんやりしていたとしか思われない

エラーが出る。

例1 知らないうちにコーヒーカップにシュガーポットの蓋をした。

例2 銀行のキャッシュサービスに、図書館の入館証のカードを入れる。

例3 リンゴの皮をむいて、剥き終わって皮ではなくリンゴを捨てた。

例4 ラップをかけた皿を冷蔵庫に入れようとして、ラップの方を入れた。

 


 

2.スキーマの活性化段階のスリップ (Slips That Result From Faulty Activation of Schemas)

★2_1.意図していたのとは違うスキーマが活性化するのと、

★2_2.意図したスキーマの活性化が消失するのとの2つに分かれる。

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★2_1 意図しない活性化 Unintentional Activation

2_1-(1). 奪取エラー(囚われエラー) Capture Slips

習慣性が強かったり、直前にしていた行為のスキーマが活性化して、

それが意図したはずのスキーマにとってかわる、つまり奪取するスリップである。

習慣や癖になった行為に囚われてしまうとも解釈できる。

(例)トランプ遊びをしていた後にコピーの枚数を数えたら、nine, ten, Jack, Queen, Kingと数えた

(例)10月から何ヵ月経ったろうかと思い、10、 11、12、13、14月と数えた。

(例)頼まれた買い物をしに回り道すべきを、いつもの通学路を行ってしまった。

(例)職場の電話に自分の名前でとってしまった。

(例)コンビニでアルバイトしている学生が、客で店にいたのにチャイムの音に思わず 「いらっしゃいませ」と声をあげた。

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2_1-(2).データ推進型活性化 External Activation (Data Driven)

外の事象に引きつられるようにしてスキーマが活性化する事。

(例)電話の最中にドアがノックされて、電話に向かって「どうぞお入りください」と言ってしまう。

(例)赤い文字で「青」と書かれた文字列を赤と間違えて読んでしまう。(ストループ効果)

2_1-(3).連想活性化 Associative Activation

話の中で、思い浮かべていた場所とまったく別の場所のことを話したりする。

話をしていて横道にそれる。

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★2_2.活性化の消失(Loss of Activation)

・意図の忘却 行為が途中で、意図を忘れて中断してしまう。

(例) 二階にものを取りに行ったが、何しにきたか忘れ、別の用を足して戻った。

(例) コミュニケーションを「コニュミケーション」と言う。(手順前後 順序が逆転したり、狂う。)

(例) 洗髪のとき、シャンプーしないでリンスした。(手順とばし 途中の行為を省略する。)

(例) 鍵をかけたのに、もう一度戸締りをした。(反復:したことを忘れて繰り返す。)


3. 誤起動(Slips That Result From Faulty Triggering of Active Schemas)

最終的に行為が実行される段階でのエラーである。

適切にスキーマが活性化していても、不適切に起動したエラーの事。

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3-(1).スプーナリズム(頭音転換) Spoonerism

2つ以上の単語の頭の音を取り換えて発声するエラーである。

(例)野球中継で、アナウンサーが「速い玉足」を「たまいはやあしでした」と実況した。

(例)「マイケル・ジャクソン」を「ジャイケル・マクソン」という。

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3-(2).混合 Blends

複数のスキーマがトリガー(起動)し、言葉の要素などが混ざるなどの現象である。

(例) 「いいでしょう」を「いいだしょう」という。

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3-(3).考えの行為化 Thoughts Leading to Actions

頭の中に浮かんだだけで実行するつもりはなかったのに、いつのまにか行為に走る例。

(例)バントの仕草をしながら代打を告げた。

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3-(4).尚早反応(先取り) Anticipation Error

もっと後で起動すべきスキーマの要素が先に出現するスリップ。

タイミングを間違うのは運動反応では多い。

出典

(§2ヒューマンエラー 吉田 信彌(2001年記、2005年改訂)様のレポートを参考にさせていただきました。ありがとうございました。)

 


 

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ヒューマンエラーの分類(その2) ー 行動のレベルによる分類

次に行動者のレベルによる視点で分類してみる事にする。

ある計画を実行するとき、そのときの状況と実行者の習熟度によって、注意の使用量が異なってくる。

従って、ヒューマンエラーはその行動者のレベルにより、次の3つの段階に分類される。(SRKモデル)

(1)ナレッジベース Knowledge Base

(2)ルールベース Rule Base

(3)スキルベース Skill Base

(1)K・ナレッジベース

多くのことを知らない・できない、初心者の段階。

例えば、採用されたばかりのスタッフが専門の機械を操作する場合、

訓練もせず、スムーズに操作できる者はいない。

スムーズに操作ができるまで相当の訓練が必要となる。

このとき、注意の使用量はほぼ全てが使われており、これまでに得た知識・経験のフル活用が必要である。

このような段階での行動をナレッジベースという。

【エラー形成因子】

1.選択性(bounded rationality)

2.ワーキングメモリ過負荷

3.視野の外, うわの空

4.Thematic “vagabondings”   vs. “encysting”

5.メモリ内の手掛かり/類推による推理

6.マッチングバイアス
(文章のたずね方に引きづられる傾向のこと。
規則の中で示されているかたちで答えようとする。)

7.不完全, 不十分なメンタルモデル

(2)R・ルールベース

問題に対する対処方法が既に決まっていることで、滞りなく問題を解決することが出来る

(マニュアルが作成されていて、マニュアルどおりに実行すれば問題ない)

とされる行動はルールベースの行動とされる。

例えば、日常的に機械操作に携わっているスタッフがその機械の操作を行う場合の行動がこれに当たる。

【エラー形成因子】

1.マインドセット(考え方の基本的な枠組み)

2.手近さ(Availability)

3.マッチングバイアス
(文章のたずね方に引きづられる傾向のこと。
規則の中で示されているかたちで答えようとする。)

4.自信過剰

5.簡略化過剰

 

(3) S・スキルベース

何度も繰り返し訓練していくうちに慣れてきて、
動作を意識しなくても体が勝手に動いてくれる状態になる。

この段階の行動が、スキルベースの行動に当たる。

【エラー形成因子】

1.新しさと以前の使用頻度

2.環境的制御信号

3.スキーマの共存する性質

4.同時進行するプラン

初心者の行動は、当初は全て不慣れな(ナレッジベース)であるが、

徐々に慣れてくるうちに(ルールベース)に、また最終的には体が勝手に動いて
意識することなく操作できるという、あまり注意が使用されない行動レベル
(スキルベース)となる。

 

この SRK モデルと先に述べたエラーの分類(スリップ・ラプス・ミステイク)
との関係は次のとおりといえる。

<スキルベース>では自己を監視するモニタリング力の低下による
「監視の失敗」が関わっており、<スリップ>と<ラプス>が対応する。

<ルールベース>及び<ナレッジベース>では「問題解決の失敗」が
発生するものであり、<ミステイク>と対応する。

 

出典

http://www.fdma.go.jp/html/new/pdf/161129_kentou/2-2.pdfを参考にさせていただきました。


 

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ヒューマンエラーの分類(その3) ー 行為からの分類

次に、行為からの視点で分類してみる事にする。

 

【行為からのもの】としては以下の3つである。

 

(1)オミッションエラー(するべきことをしない)省略エラー。

 

2)コミッションエラー(余計なことをする)

やってはいけないことをする。実行したが正しく行わない。

 

3)ミッションエラー(目標を取り違える)

  なにがより大切な目標かを見失う。出来もしないことをやってしまう。積極的行動によるエラーであり、ベテランが陥りやすい。

自己顕示欲、自己優位性、自己重要感、自己効力感などに基づき、使命感の取り違えから起きる。

日本社会は、ハイ・コンテクスト(High Context)文化。暗黙の目標が支配している。

したがって、しばしば、外部目標と内部目標との間にズレが発生する。

   【ハイコンテクスト文化】とは?

   聞き手の能力を期待するあまり下記のような傾向がある文化の事。

  •    直接的表現より単純表現や凝った描写を好む
  •    曖昧な表現を好む
  •    多く話さない
  •    論理的飛躍が許される
  •    質疑応答の直接性を重要視しない
 
 

出典

http://sym-bio.jpn.org/file/file_20070129140714.pdfを参考にさせていただきました。


 

bousicom

【違反】と違反をもたらす条件

上記で述べた他に、

意図的なヒューマンエラーをもたらすものとして悪質なものに、【違反】というものがある。

   日常的に繰り返している違反行為

   近道をしようとする出し抜き行為

   最適化しようとする行為

   例外的に処理しようとする行為等があげられる。

違反をもたらす原因として次のような事があげられる。

 

・組織的な安全文化の明白な欠如

・労働者と経営者間の敵対的関係

・モラルの低下

・貧弱な監督とチェック

・違反を大目にみる作業グループの規範

・リスクの誤認識

・管理上の手当と配慮の欠如

・労働に対する熱意や誇りに乏しい

・悪い結果にはならないという信念

・自己尊重が低い

・身についたどうしようもなさ

・規則を曲げることを許す風土

・明確さに欠けるか、明らかに無意味な規則

・年齢、性(若者は違反しがち)

 

 

出典

http://sym-bio.jpn.org/file/file_20070129140714.pdfを参考にさせていただきました。


 

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